->  一緒に行きたいな -外つ国の遺産-  <-


「そろそろ夏祭りの季節だねぇ・・・」
「ナツマツリ?」
 なんとはなしに呟いたミストの言葉に、少女が反応を示した。彼女の名はレジェ。
「うん、お祭。みんな浴衣着て、出店を見て回って、ワタアメとか買って・・・」
「お祭! お祭あるの!?」
 前に聞いて、非常に興味が沸いた単語が並んだため、レジェは飛び跳ねるように喜び、聞き返す。
「うん。まだ日はあるけど―――」
「オロール! オロール!」
 ミストの返事を聞かず、執事の名を呼ぶ。ここら辺が自分勝手というかマイペースというか。ミストは言葉を止め苦笑する。
「お呼びでございますかな?」
 彼女の影から現れる、その執事。奇妙な人物だが、それを言うと色々と収集がつかないので置いておくとしよう。
「お祭あるんだって! ユカタ着て一緒に行こうよ!」
 周りの視線なぞ知った事か。わきゃわきゃと楽しげな表情を浮かべている。
「ふむ。左様で御座いますか・・・ はて、何時始まるのですかな?」
 そんなお嬢様を独特な笑みで眺めながら、まだ聞いていない日にちを問う。
「えーっと・・・ 近いとこはいつだっけ?」
 聞かれ、思い出せず隣に座っていた客に聞く。
「そうですねぇ。私が知ってるところでは、1週間後でしょうか」
 話を振られた、黒の着物を着ている中世的な風貌の男、綾歌が答えた。
「1週間後だね! よし! それじゃみんな誘って行こうよ! 勿論ユカタで!! あ、オロールも着るんだよ!」
「・・・はい、畏まりました」
 止まることを知らないテンションで話すレジェに、オロールは表情を崩さぬまま了承した。
「ふふ、元気だね」
「ええ、ほんとに・・・ こちらまで元気が出てきそうですよ」
 と、枯れg・・・ 失礼。彼女の元気に微笑む二人。
「後は・・・・・・」
 バコッ。
 ふと何かを考えていたレジェの耳に、床板が外れる音が聞こえる。
 まさか――― どことなく明るい表情になり、そちらを向く。
「イグ―――」
「っあ〜どっこいしょ・・・」
 違った。
 自分が求めていた者の姿では無かった。
「アル・・・ お願いだからちゃんと扉から入ってきてくれない?」
「ん〜? 気にするなって」
 何時ものように、ミストとアロルドのコントじみた風景が広がる。
「・・・如何なされましたか?」
「えっ!? ん、ううんっ なんでもない・・・・・・ 楽しみだね!お祭!!」
 見て分かるほど落ち込んだ表情をした彼女に執事は問いかけるも、レジェはすぐさまさきほどの笑顔を向けてきた。

(イグニス・・・・・・)

 少女の心で 蝋燭がゆれていた