room43_20140525
ご案内:「※鬼ヶ岳(小さな墓石のある野原)」に狐さんが現れました。 (05/25-19:10:05)
狐 > (変わらず、昨日と同じ柔らかな野原に更に尻尾を重ね、その上で眠りこけていた。違う点はと言えば、星がまだ見える時間ではない事と、青いマントが体の上に掛けられていたと言う事。風鈴の音は絶えず、山のどこかしらから届いていた。)―…ん…。(ぴく、と微かに眉を潜める。) (05/25-19:15:03)
狐 > (≪リィン・・・≫どこからか、鈴の音が聞こえた。体中が痛くて、そして重かった。柔らかな野原に傷だらけの痩せた身体を横たえた雌の子ギツネは、その音に気付いてふと目を開けた。) (05/25-19:17:29)
ご案内:「※鬼ヶ岳(小さな墓石のある野原)」に鬼さんが現れました。 (05/25-19:19:47)
狐 > (霞む視界に映ったのは、こちらを覗き込む、幼い人間の少年の顔だった。少年は言う。『目、覚めたんやね。よしよし、もう、大丈夫やけん。』心配そうだった表情をホッと緩め、薄汚れた狐の鼻先を撫でた。) (05/25-19:23:32)
狐 > (子ギツネは、喋る術も身体を動かす気力もなかった。『迷子なん…?お母さんは傍におるん?酷い怪我じゃけど、誰かに苛められたんやろか…。』おろりと眉を下げる少年の顔を、子ギツネは虚ろな瞳で見上げるだけだった。『そうや、狐さん、お腹空いとるやろ…?これ、食べる?あぶらあげ。』少年は思い立ったように腰に下げていた巾着から、きっと昼餉にしようと思っていたのだろう。稲荷寿司をとり出すと、油揚げの端だけを千切って、子ギツネの口元へと寄せた。) (05/25-19:27:51)
狐 > (僅かな力で顎を動かし、はくり。とそれを口に含んだ。噛む力も、飲み込む力も残ってはいなかったけど、口の中が甘くなった。『美味しい?僕、大人のひと呼んでくるけん、ちょっとだけ、待っとってね!すぐじゃけん!』そう言って少年は、腰に下げた鈴の音を響かせながら去って行った。) (05/25-19:30:16)
狐 > (身体はもう、ぴくりとも動かなかった。薄らと開いた目にももう、何も映らなかった。それでも、薄れる意識の中で、再び大きくなる鈴の音と、『狐さん!』と自分を呼ぶ泣き声だけは聞こえていた。私がこのまま眠りに着くと、この少年は泣き続けてしまうのだろうか。そんな事を考えて、思考が途切れた。もう二度と、目を覚ます事は叶わなかった。) (05/25-19:35:51)
狐 > ≪リィーン・・・≫(風鈴の音) (05/25-19:36:58)
狐 > (≪リィー ン…≫縁側の軒先に吊るした風鈴が風に揺れる。女は、男の背に薬を雑に塗りたくっている最中だった。男の背には、小石をぶつけた様な傷がいくつもあった。『なぜだ。法師であるお前は里の人間からああも信頼されていると言うのに。いっそ正体を明かしてしまえ。「ワシはお前らを護る為に鬼になったんじゃ」とな。』その傷は、外界の敵との戦いで負ったものではなかった。鬼の姿で人間と鉢合わせると、怯えて逃げられるか、あるいは物を投げつけられるということが多々あった。) (05/25-19:43:34)
鬼 > (男は、女に背を任せ、ゆるりと首を横に振った『そうは行きませぬ。ワシが勝手に鬼になり、勝手にしとる事じゃけん。鬼は恐ろしいものじゃ。それがこの世の常識じゃ。みだりに、皆の心を乱す必要もないでしょう。』) (05/25-19:45:53)
狐 > (女は苛立った。呑気な男に対して。真実をしらぬ里の人間に対して。歯がゆい様な思いが募った。『…分からぬな。大体、お前はこの里の生まれでもなかろうに。何故、そこまでせねばならぬのだ。』余りに苛立ったので、ぐりぐり。拳で薬を塗り付けた。) (05/25-19:48:39)
鬼 > (背中が地味に痛い。あいたた。と男は苦笑を浮かべる。「事を為そうとするのに、大義など必要じゃろうか。それに、時間はいくらでもありますけんの。時が流れれば、時代も変わる。焦らず、じっくり、距離を縮めて行けたらエエなぁと、ワシは思うとるんじゃ。―人も鬼も、狐さんのような存在とも。」) (05/25-19:51:48)
狐 > (『―……フン。私には、山ノ神から仰せつかった大義がある。』きっぱりと言い切って、口をへの字に曲げた。拳で薬を塗りつけるのをやめて、傷のひとつひとつに、指先できちんと薬を塗った。≪リー ーン・・・≫) (05/25-19:55:41)
狐 > ≪ リィーー ン ・・ ≫(風鈴の音) (05/25-19:56:39)
鬼 > (『狐さん!! 狐さん・・・!!』男は鬼の姿のまま、ボロボロになって、ボロボロと大粒の涙を零し、荒野の真ん中で膝をついた格好で、倒れた女を抱き上げていた。名を呼んで身体を揺する度、胸元に下げた鈴がチリンチリンと鳴った。) (05/25-20:01:45)
狐 > (頭がぐらぐらする。女の白い髪と頭部は紅く染まっていた。揺らされ続け、血濡れた瞼を開けると、酷い形相で泣き喚く鬼をじとりと見やった。『…五月蠅い。痛い。離せ。』手の平で、角の生えた鬼の頭を掴むとぐいと押しやった。) (05/25-20:04:50)
鬼 > (『良かッ … !』ぷるぷる。ぶわわっ!言葉にならない。男は、鬼の形相に似つかわしくない勿忘草色の瞳をこれでもかと滲ませていた。『…ワシは、狐さんが…しん、し、死んで、しもうたんかと…!』おーい。おいおい。) (05/25-20:10:49)
狐 > (『…案ずるな。ただの脳震盪だ。』下界の悪鬼と目の前との鬼が戦っている最中、かち合った魔弾が弾け飛んで、被弾して崩れた岩壁の下敷きになっただけだった。咄嗟に尻尾で身を守ったので、頭の傷以外はどうという事はない。『お前より先に死んでたまるか。』男が涙やら何やらを撒き散らすので、女はぷい、と顔を背けた。) (05/25-20:15:07)
鬼 > (『ああ、良かった・・・!ほんまに良かった・・・!』男は顔面を押しやられても、決して女を離さなかった。自分がどれだけ傷つこうと、いつもへらへら笑っているだけなのに。この時は子供の様に、泣き散らかした。えぐえぐ。べそべそ。) (05/25-20:19:17)
狐 > (このまま、男は泣き続けてしまうような気がして。呆れて、少し可笑しくなった。視線を男へと戻す。まだ、頭がくらりとする。『鬼の癖に、泣く奴があるか。…バカ。』顔に押し当てていた手の平を離す。自分が妖狐になる前。少年が鼻先を撫でてくれた時のように、男の鼻筋を撫でてやった。) (05/25-20:25:08)
狐 > ≪リ ーン ・・ リ――――― ン・・ ・≫(風鈴の音) (05/25-20:28:05)
狐 > (風鈴の音よりも更に近くで、泣き声が聞こえる。元気な、赤子の泣き声。それに交じって、細やかな雨の音も微かに聞こえる。目を開くと、障子越しに差し込む夕日の光が、居間を橙色に染めていた。『―………』そより、ふわり。布団の上に横たえた9つの尻尾が揺れた。) (05/25-20:32:27)
鬼 > (『ぎ づ ね さ ぁ あ あ ぁ ん…!!!女の子じゃ…!可愛い女の子じゃぁ あ !!』びええぇん!!男は、赤子に負けぬ勢いで泣き喚いていた。正直、五月蠅かった。) (05/25-20:36:26)
狐 > (女は、そんな男をチラリと見て、表情を和らげて。とりあえず流しておいた。傍らにいた人間の産婆が、おくるみに包まれた子を抱かせてくれた。胸にすっぽりと収まる小さな赤子の頭には小さな角が2本あり、狐の耳と尻尾もあった。女は、涙ぐみながら大事そうにその子を抱いた。) (05/25-20:40:57)
鬼 > (『二人とも、よぉ頑張ったのう・・・!』男も早く我が子を抱きたかったが、赤子を抱く女の姿を見れただけで、十分に幸せそうに顔を崩壊させながらも、なお泣いた。余りに男が泣くせいか、とはいえ、赤子も女も泣いていたが。それに感化された様に、外で降る雨音が、ざぁ。と一気に強まった。) (05/25-20:45:31)
狐 > (『…あまり泣くなよ。山が雨に浸かってしまう。』涙を拭いながら、女はへにゃりと微笑んだ。夕暮れ時の、雨の降る日の事だった。) (05/25-20:48:37)
狐 > ≪ リ ・・・・ ン ・・≫(風鈴の音) (05/25-20:49:16)
狐 > (新緑が眩しい季節だった。庭に植わった紫陽花が、そろそろ色づき始めるように思えた。縁側で、揺りかごに乗せられている赤子の枕元に鬼と狐が混じった様な奇妙な面が置かれていた。赤子は『あぶ・・』だの良く分からない声を洩らしながらじぃ、とそれを見詰めている。) (05/25-20:54:29)
狐 > (『どうだ、気に行ったか?気に入っただろう?』女は揺りかごを揺らしながら、にんまりと笑みを湛え、ふんぞり返っていた。背後にある障子の穴は、いつの日からか増えていなかった。) (05/25-20:56:28)
鬼 > (男は、茶を乗せた盆を持って縁側にやってくると、胸に下げた鈴の音を鳴らしながら2人の傍らに腰を下ろした。『狐さん…。それは、ちょいと…。』恐ろしすぎはしませんか。と続けそうになった言葉が、にんまりとした笑顔を見ると引っ込んだ。生まれてそろそろ三月になる子も、面を怖がっている様子はなかった。鈴の音で男に気付いたか、此方を見て『ぁーぅ。』と声を発して短い手を伸ばし、柔らかな頬を緩ませる赤子の姿に、男は破顔した。その手をちょい、と握ってやった。) (05/25-21:01:54)
狐 > (『ん?なんだ?良い出来だろう?妖狐の世では、新たな命が生まれると、その祝いに面を贈る。この子は鬼狐だからな。特注品だ。』にまにま、女は大層機嫌よさげに笑って、9つの尻尾を揺らした。『―…名付けはお前がどうしてもと言うから、譲ってやったのだ。これくらい、良いだろう。』文句があるか。と腕を組んだ。) (05/25-21:05:51)
鬼 > (いえいえ、滅相もない。と男は締りのない顔を横に振った。『ええ。それで、その。狐さん。三月夜の日に、この子に名を贈るその時に、狐さんにも名を贈っても良いじゃろうか…? 狐さんや妖の様に、生まれた時から「そのような存在」である者は滅多に固有の名前を持たんと聞くが、この子が母親を呼ぶ時に、名はあった方がエエと思うんじゃが…。』どう、だろうか。そわりそわりとしながら男はちらりと上目に女を見やった。) (05/25-21:10:01)
狐 > (そわりそわりとする男の姿に、きっとそれだけが理由ではないのだろうと女は思って、少し頬を赤らめた。くすぐったい様な心地がして、唇を尖らせると、男から視線を外して赤子を見やった。『……フン。好きにしろ。』と女が返すや否や男が喜びのあまり飛びあがって、鈴の音が五月蠅く響いた。叱ろうかとも思ったが、赤子がきゃっきゃと笑うので、やめておいた。) (05/25-21:14:47)
狐 > ≪ リー ン ・・・ ≫(風鈴の音) (05/25-21:15:47)
狐 > (下界は、瞬く間に瘴気に呑み込まれつつあった。) (05/25-21:16:33)
狐 > (遥か昔、名のある術師と妖狐の力に封じられた邪悪な鬼がいた。鬼を封じた岩に刻まれた封印の呪文が、永い年月雨風に晒されて、その効力が切れたらしい。そんな嘘か誠かも分からぬ噂が流れて、下界から届く荒んだ風が、真実味を含んで山里を吹き抜けた。) (05/25-21:21:22)
狐 > (『…惨いものだな…。』女は、男と共に下界に降りてきていた。かつて人が息づいていたその地は、その一面が赤と黒とに覆われていた。そこかしこに転がる炭の様な塊は、大人ほどの大きさのものから、小さなものまで、様々だった。女は、唇を噛んで、その光景を目に焼き付け、その地が漂わせる香りを肺に送った。) (05/25-21:25:48)
鬼 > (法師姿の男はしゃがんで手を合わせ、印を結んだ後、立ちあがる。『このまま野放しには…出来んのう…。』鈴の音と共に、しゃん。と錫杖の音が鳴った。その音は、悲しいほどに良く響いた。) (05/25-21:29:30)
狐 > (『―…私は、覚悟は決まっている。』今までの下界の鬼とは遥かに、凶悪の度が違う。しかし、どうあっても里を、山の神を、そして我が子をあの鬼から護らねば。命に代えても、護らねばと思った。『お前はどうだ。』) (05/25-21:33:05)
鬼 > (『―…ワシもじゃ。』男は答えた。『あの子らがこれから育つ世を、こんな風にさせるんは、嫌じゃ。』≪リーン・・≫鈴が鳴る。) (05/25-21:35:57)
鬼 > (『それに、ワシじゃって、こんな風になった里ではとても暮らせる気がせんけん。戦うしか、ないじゃろうなぁ…。』男はその景色を眺めたまま、言葉を続けた。『ほんで、戦って、勝って、皆で生きよう。狐さん。明日は、待ちに待った三月夜じゃ。』へらりと笑って、男は女の手をとった。) (05/25-21:39:29)
狐 > (口元に、僅かばかりの笑みが浮かぶ。『―…ああ、そうだな。 そうしよう。』女は、男の手をしっかりと握り返した。) (05/25-21:41:45)
狐 > ≪ リィィ ―――― ・・ン ・・≫(風鈴の音) (05/25-21:43:13)
狐 > (里は、瘴気に包まれていた。) (05/25-21:44:48)
狐 > (紐の千切れた鈴が、黒い墨へと化した地面に落ちた。そこは、嘗てよく耕された柔らかな土に覆われた畑だった。) (05/25-21:46:58)
狐 > (落ちた鈴はチリンチリンと転がって、赤い水溜りに浸り、音が止んだ。) (05/25-21:47:53)
狐 > (女は、その水溜りの中に横たわっていた。いつかの様に、身じろぐ事さえ叶わなかった。その瞳に、対峙する二人の鬼を映すのがやっとだった。) (05/25-21:50:25)
鬼 > (昼だと言うのに、辺りは夜のように暗かった。鬼の姿をした男は、立っているのがやっとだった。それは、目の前の鬼も同じようだった。次の一撃で全てが決まる。そう思った矢先、鬼は嫌らしい笑みを浮かべると、男を擦りぬけ、山の中腹にある祠へと飛んでいった。そこには、三月夜を控えた赤子を匿っていた。) (05/25-21:56:47)
鬼 > (それを視界の隅に捉えた女の絶叫が響いた。それまでピクリとも動けなかった筈の女は、泣きながら訴えた『私の遺骸を使って、お前の法力であの鬼を封じろ!!あの子を鬼の好きなようにされるような事があってはならぬ…!』と。山の中腹からは、2つの妖気が1つになる気配がした。赤子は鬼に取り付かれた。妖狐の血をひく子は、今の憔悴した鬼程度の力であれば押さえつける事が出来るだろう。しかし、鬼が力を取り戻したら、どうなる。男は、已む無く印を切った。身体に残った全ての力を振り絞って、赤子の身の底に鬼を封じた。) (05/25-22:04:49)
狐 > (刹那、その衝撃で時空が歪む。風が吹き荒れ、鈴が転がる。女はもう、動かなかった。≪ リ ・・ ン・・ ≫) (05/25-22:07:19)
ご案内:「※鬼ヶ岳(小さな墓石のある野原)」から鬼さんが去りました。 (05/25-22:07:24)
狐 > ≪ リーン リィ ・・ ン ≫(風鈴の音。そっ…と女は目を開く。随分と長く眠っていた様だった。) (05/25-22:08:48)
狐 > (視線の先には、明るい夜空があった。つ、と涙がこめかみを通って下へと落ちる。) (05/25-22:10:30)
狐 > ……さぁ、鬼。もう直だ……。 あの時の続きをしよう。(身体の痣が疼くのを抑え込む。そうして再び、目を閉じた。暫くの後、女は立ちあがると掛けられた青いマントに眉を下げ。持ち主の家の前に持っていくと、その家の誰とも合わず、いつものように山を降りた。) (05/25-22:16:03)
ご案内:「※鬼ヶ岳(小さな墓石のある野原)」から狐さんが去りました。 (05/25-22:16:15)
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