room42_20150218
ご案内:「イースト・エンド」にカイムさんが現れました。 (02/18-19:13:33)
カイム > …………ぅ……………(ここ数日世話になっていた柔らかい布団の匂いではなく、嗅ぎ慣れたドブ水の匂いで目覚めた。顔をつけていた建物の壁には苔がこびりついている。行く時も唐突だったが、帰ってくる時もまた唐突だったと思う。いや、あの世界は本当はうそで、本当は無かった事なんだろうか、とぼんやりと思いさえもする。何故なら―――…ここには、相変わらず何もない) (02/18-19:17:00)
カイム > ………ぇ。(それで立ち上がろうとして、男は驚く。手には、ホウキを握り締めていた。それから自分の右手の人差し指には黒曜石の指輪があり、男は狼狽する)………夢じゃ、なかったのか………いや、夢だったとしても、夢じゃなかったとしても………(酷い現実だと呟きつつ、男はその場を離れ始めた。用水路沿いから路地に上がる。霧が立ち込めており、男は緩く被りを振った。街灯はあるのに電気はついていない。こんな貧民窟の電球は、みんな貧しい人間が引っこ抜いて売ってしまうからだ。薄暗い明かりはロウソクのものだ。男はゆっくりと目的の無いままに歩み出す) (02/18-19:21:29)
カイム > (『良く生きてたなあ』路地を暫く進んでいると地面から声がした。男がそちらを見下ろせば、路地の片隅、酒場の裏手に小さな老人が蹲るような姿勢で座っていた。男はその姿を見ると、はっ、と目を見開き、目を細めながらに彼に近づいた)……あんたも、生きてたのか……ほら爺さん、酒だ。(そう言って、人からの貰い物ではあったけれどウォッカの瓶を老人に差し出した。老人は、酒か、と皺くちゃの貌で頷きながらそれを受取り。『お前はもう死んだものと泥ひばり達は思っていたようだ―――…あのお屋敷の人間は、昨日処刑された執事長で最後だった。もうこのロンドンに帰って来るんじゃあねえ、お逃げ』) (02/18-19:28:34)
カイム > ……駄目だ、船でも馬車でもすぐ見つかる、このロンドンにいる限りはどこにもいけやしねえんだよ……あんただってそれが分かってるから、ここで飲んだくれてるんだろう……(男がそう言えば、老人は膝立ちになり、苦しそうにしながら男の頭をはたく。『いいからいけ……ここにいたら、ここで死ぬ。それだけだ……』老人の言葉に男は無言のまま殴られ、頷くと、老人の横を通り抜けて走り出す。底が壊れた靴が、パカッ、パカッと鳴り、足が滑りそうになるけれども) (02/18-19:37:16)
カイム > (ああ、空が飛べたらな。そんな事を思う。海路も陸路も塞がれたなら、空しかないのに。だから自分はあの世界で、空が飛びたい、なんて願いを持った。空を飛ぶなんてことは、普通の人間にはできない事だ。だから魔法使いになりたい、なんて、言い出した男は、走りながら笑う)―――…子供の見る夢より酷えじゃねえか。(握り締めたホウキは今の男にとっては単なるホウキでしかない。路地から広場に通り抜けたところで、男は新聞屋の張り紙を見て、思わず足を止める―――…そこには、とある貴族が国家反逆の罪として全員処刑された事が記されていた。白黒写真には、公開絞首刑の写真も掲載されており、男は―――…思わず、足が竦む) (02/18-19:44:56)
カイム > ………だんな……さま………おく、さま………おじょう…さま………(彼と彼の家族が死んだ事は彼自身のせいだったかもしれない。だがその一端は間違いなく、自分が後押ししたせいだ。そうして男がその場に立ちすくんでいる間に、誰かが通報でもしたのだろうか。気が付けば、サーベルが金具を打ち、靴が地面をける音に囲まれていた。のろりと視界を上げれば、警察に男は囲まれている) (02/18-19:51:26)
カイム > (『セドリック・バンフィールド!……貴様を国家反逆罪及び、伯爵強襲事件の重要参考人として逮捕する!』誰かが、男の名を叫ぶ。令状を読み上げる。そうしながら警察の輪は、じりじりと男を囲みながら狭まって来た。なるべく生け捕りにしろと言われているのだろう。公開処刑を行わなければ、この男を捉える事に意味がないからだ。男は、眉根を寄せながらその周囲を、震えながら見ていたのだが、ふいに、ホウキを握る手に痛みを感じて右手を見る。ずっと、しなれない指輪をしているので、ものを持つ時、運ぶとき、違和感がある)………あの場所に、戻れたら、良いな………(やりかけのこと、やりたいこと、たくさんあったのに。そう思いながら男は、本で読んだ飛空の術のイメージをし始めた。まだロクな練習もできていないのに、こんな場所が最初で最後の実戦になってしまうかもしれないと思いつつ―――…歌を、歌う) (02/18-20:04:35)
カイム > (この世界で聞きかじったオペラではない。紡ぐのはあの世界で勉強した言葉で、あの世界で知った唄だ。精霊やエルフの言葉と本には記されていたが、男は祈りを捧げるような歌詞の意味を知ってからその言葉に酷く同調してしまっていたから―――…この、魔法要素の無い世界でも、奇跡が起きたのかもしれない。人差し指の黒曜石の御蔭でもあったかもしれない。男の頭上に月桂樹の冠に似た形状金色の紋章が浮かび上がり、足元から青い光が立ち上り、男の身を炎が覆うように包んでいく。やがて男の全身がその炎に包まれた後、パンッ、と音を立てて炎が消えれば、男の髪はゆらゆらと風にでも吹かれているように揺らめき、ヘーゼルグリーンの瞳が発光する青色になると同時、男の背にめきめきと音を立てて翼が生えた。ただその背にあるのは、立派に翼を纏った美しいものではなく、下半分が骨化していたりする醜いもので―――…それを見たヤードの人間達は、それぞれ怯えた声をあげた) (02/18-20:17:20)
カイム > (男は魔法使いとして未熟だった。それと博識ではなかった。だから、男が美しいと思い一生懸命に学んでいた言葉には”まちがい”があり、自然を愛し感謝し、和を大事にする意味の言葉は―――…いくつかの文字の欠けや抜け、発音の間違いなどにより、呪いの言葉となって心無き無邪気なものと契約をしてしまった、らしい。男のテノールは魔力を帯びたせいか、みるみると辺りに響く量を増す。その音は聞いたものに、心の奥底にしまっていたトラウマや忘れたい事をより負の感情を重ねて思い出させるものらしい。男は、そのいびつで醜い翼を生やした自分には気づかないまま、握ったホウキに力を込める。ホウキはそよぐ風を捕まえるように震え始めると、やがて空に浮かびだす。男は慌ててそれに捕まるのだけれど、ホウキに乗る事はできず、ホウキを制御する事もできず、ただ引っ張られていくように空に浮かんだ)……あぁ、飛べたァ―――…(不協和音を撒き散らしながら災厄のように空を飛ぶ男に、自分の姿は見えない) (02/18-20:25:34)
カイム > (化け物、ばけもの、化け物だ、あれは、バケモノだ。空に浮かぶ男の姿を視認したヤード達が口々にそれを言うのに、男は眉根を寄せながら見下ろす。お前達が先に、俺を、旦那様をだましたくせに。ああ、本当の事など誰も知らない、知れない。もう王に捧げる剣などない。この国はうんざりだと、思いながら声を張れば、ぐにゃり、と視界がくらむ。その際、男は目映い光に包まれて彼らの前から消えるのだが、男は急に気を失ったように感じていた。起きた時には、再びいつかと同じように時狭間の辺りに飛ばされているのだろう。ただ、その時には両手で顔を覆い、泣いたという) (02/18-20:30:29)
ご案内:「イースト・エンド」からカイムさんが去りました。 (02/18-20:30:42)
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