room10_20150327
ご案内:「闇の入口」に支倉惟花さんが現れました。 (03/28-01:12:46)
支倉惟花 > (暗い道を歩く人影……。) ここ、どこ……?(ぶるるっ、と震えながら道無き道を進む少女が1人。) 学校から家までの間に、森なんて無かった筈なのに……。(黒々とした木々が、月光を拡散する霧の間に立ち並ぶ。まるで邪悪な巨人のように見える……。不意に、ローファーがべきっ!と枯れ枝を踏み折り、その音に自分で驚いて身を震わせた。) ……もう、疲れたよ……。(どれくらい歩いただろうか。スマホを出して確認すると、1時間ほど歩き回っていたことがわかった。ずっと圏外表示だ。当然ネットにもつながらない。) (03/28-01:16:51)
支倉惟花 > 私……夢でも見てるのかな。それなら、夢だってわかってるから醒めるはずなのに……。(今日は久しぶりに温かい気候で、コートは家においてきていた。でもここは、まだ寒い。霧のせいで、あたりもはっきりしない。兎に角歩いていれば道路か何か見えないかと、その一心で、当てもないのに歩を進めているだけだ。気温も、視界の悪さも、先行きの見えなさも。全てが心を不安に引きずり込んでくる。せめてあのコートがあれば、最初の1つだけは避けられたかも知れない。持ってくればよかった……益体の無いことを考えることで、目の前の現実から目を逸らしている。) (03/28-01:19:46)
支倉惟花 > (その時、不意に音が響いた。テレビで聴いたことのある、狼の遠吠えに似ていた。驚きに足が止まる。) い……いやいや、現代日本で、野生の獣なんて、いるわけないし……。(うすうすここが「現代日本」などという場所ではないことに勘付きながらも、顔を引きつらせてそのことを否定する言葉を口走る。) (03/28-01:23:29)
支倉惟花 > (再び歩み始める。獣の存在を否定はしたものの、無意識的にその声から遠ざかる方向に進路を変えていた。) 早く、森から出ない……と……。(声が途切れたのは、更にその耳に聞こえてきた音があったからだ。) あし、おと……?(これもテレビで見ただけの知識だったが。それは、四足の獣が走るとき特有のリズムで、地面を叩く音だった。しかもそれは――) 嘘、こっち、きてる……!?(恐怖が沸き上がってくる。咄嗟に駆け出した。まずい。まずいまずいまずい。本能がアラートを発し続けている。) はっ、はっ、はっ……!(息を切らせて、木々の合間を駆ける。自分でも驚くほど、躓かずに走ることができた。なのに。) 近付いて、きてる……! (03/28-01:30:19)
支倉惟花 > (後ろを振り向く。その目が大きく見開かれた。霧の向こうから迫る影が、確認できてしまったからだ。) なに、あれっ。(思わず声が出る。最初はそれこそ狼かと思った。だが違った。狼にしては、大きすぎる。間違いなくあれは熊くらいの大きさだ。だが脚が長い。そのひょろっとしたスタイルは、狼や犬に似ている気がした。だが、霧の切れ目から差し込む月光に照らされたその東部は、骨の仮面に鎧われたような鼻面の長い顔で、今まで見知ったどんな獣にも似ていなかった。いや、どんな生物にも似ていない……。)なにあれ、なにあれなにあれなにあれぇっ……!(恐怖というガソリンが心臓を動かし、より早く走った。そのつもりだったが、着実に後ろの獣は近付いてくる。) (03/28-01:37:50)
支倉惟花 > (その足音が、止まった。一体何が? 思わず振り向く。確かに巨大な影は後ろに小さくなっていく……。ほっとしかけたとき、獣の動きに気付いた。) まさか。(獣は、小さく身を屈めていたのだ。丸で、バネを縮めるかのように。一瞬の直感で、減速覚悟で横に折れた。次の瞬間、獣が撓めた力を解き放ち、大距離の跳躍を行った。上よりは前に弾き出されたそれは、巨大な砲弾のようだった。細い低木など薙ぎ倒し、弾頭のような頭部で張り出した太い枝をも粉砕し、少女のすぐ傍を飛び去ってゆく。吹き飛ばされた低木の破片が少女を打ち据えた。) あぅっ……!(転倒。遂に脚は止まってしまった。だが、これで済んだのは行幸だったといえる。そのまままっすぐ逃げていたら、今の一撃で文字通り木っ端微塵にされていただろう。間一髪で生を拾ったことに気付き、顔が青ざめる。) (03/28-01:44:07)
支倉惟花 > (木々を薙ぎ倒しながら着地した獣が、ゆっくりと骨面をこちらへ向けてくる。ちゃんと解っているのだ。獲物がどこにいるかを。) ……。(体中痛むが、なんとか立ち上がることができた。そのおぞましい顔に見詰められ、後ずさりする。もう、逃げ場は無いことは解る。この距離は余りにも絶望的だ。) ……ちくしょう!(どうして、私がこんなめに。その泣き言を怒りに転化して、その獣をにらみつけた。獣はかたかたと歯を鳴らす。剃刀のような歯が、二重に並んでいるのが見えた。あれで私を細切れに噛み千切って食べるつもりか。ちくしょう。こうなったら、絶対に負けてやるもんか。殺されるなら、喰われるなら、挑んでそうしてやる。にらみつけたまましゃがみ、低木の破片を拾い上げた。人間を殴るにはそこそこ使える棍棒たりえただろうが、あの獣相手ではオモチャみたいなものだ。それでも、逃げてもダメなのが解って逃げて、抵抗もできずに後ろから食われるよりマシだ。) (03/28-01:55:35)
支倉惟花 > (再び、獣が身を屈めた。あの砲弾みたいな体当たりの予備動作だ。距離が近すぎて、横軸を移しても対応されてしまう。向こうが跳ねてから避けなければならない。武道は齧った程度の自分に、それは難易度の高すぎる行動だった。でもやらなければならない。) かかってこぉい!(自分を鼓舞するため声を出した。あのカタい頭での突進はさっき見た。一応見た。ならその目の周りはどうだ。そこに、この即席棍棒をたたきつけてやる――。) (03/28-02:06:34)
支倉惟花 > (ざわ、と空気を震わせて――獣が跳ねた。さあ来い……。) !?(違う。さっきの体当たりとは違う。前足が、前を向いている。さっきは流線型を意地するように後ろを向いていたのに! 完全に頭部に集中してタイミングを合わせようとしていたため、反応が遅れた。迷った。そしてそれは、遅過ぎた。) ――っ……。(突撃と同時に横薙ぎに腕が振るわれる。それが惟花の体を過たず捉え。) ぁっ、 (横へと弾き飛ばした。少女の肉体は吹き飛び、低木をヘシ折り、ごろごろと転がった――。) (03/28-02:14:00)
支倉惟花 > (死。死ぬのだろうか。死を意識した。) (03/28-02:26:29)
支倉惟花 > ……。……?(だが、予期していた暗黒は一瞬。) うっ……。(全身に痛みは走るが、指先は動く。腕も。脚も。目を開いた。光が飛び込む。……そう、光。紅い光だった。) なに、これ……。(自分の全身から、淡く紅い光が発せられていた。この光が、致命の一撃から自分を守ったのだと直感した。そして、最も光の強い場所に自然と目を向けた。左手の甲。そこには、弓矢を思わせる紅い紋章が浮かび上がっている。) (03/28-02:34:06)
支倉惟花 > (ゆっくりと起き上がる少女の姿に、獣もまた戸惑っているようだった。何故、まだ動けるのか解らない。そんな雰囲気を感じた。) そうだよね……私自身、驚いてるんだから……。(それでも、今この身に宿った光が。この理不尽を覆す力になるかも知れないことは理解できていた。赤く輝く左手を獣へとまっすぐに向ける。獣が警戒し、再び屈んでいく。あの砲弾体当たりの予備動作なのは解っている。3度目の正直だ。ここでなんとかできなければ、もうおしまいだろう。それでも不思議に落ち着いていた。一度、死んだと確信してしまっため、変に肝が据わった感があった。久しぶりの感覚だった。右手を左手の光に沿え、ゆっくりと後ろへ引く。そう、弓を引き絞るように。光は右手の動きに沿って真っ直ぐに伸び、太い光の矢を番えたかのような形となった。) (03/28-02:45:27)
支倉惟花 > (左手の紅い光が、更に上下にも伸びた。弓そのものにも、大きな十字架を抱えているようにも見える。) 来い!(先に少女が吼えた。応えるように獣が唸り、跳ぶ。その過程が、極限まで高まった緊張の中、少女にはゆっくりとした動きにすら見えた。) ――。(番え、引き絞り、放つ。そうすれば、当たる。少女は、放った。) ふぅっ……!(瞬間、巨大な紅い光の矢が空間を突き進み、真っ向から獣の喉へと突き刺さった。内部を抉り貫通する。獣が絶叫と共に失速し、墜落した。ずぅん、という地響きを立てて。) ……。(そのことを冷静に確認した後――どっと、恐怖が押し寄せてきた。膝をつく。全身の力を振り絞ったようにへとへとだった。) (03/28-02:51:43)
支倉惟花 > ……ぅ。(奇妙に血臭のしない獣の死体の前で、不意に猛烈な眠気が襲いかかってきた。ここに存在する脅威がこの獣だけである筈が無い。ダメだ。眠ってはいけない。) ダメ、だよ……寝たら、ダメ……。(必死の抵抗むなしく、意識はまどろみの中へ落ちていく。少女の体は横に倒れて――。) (03/28-02:56:05)
支倉惟花 > (一陣の風が吹いたとき、既にそこに少女の姿はなかった。) (03/28-02:56:16)
ご案内:「闇の入口」から支倉惟花さんが去りました。 (03/28-02:56:20)
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