room02_20150504
ご案内:「※荒野の片隅」に娯暮雨さんが現れました。 (05/04-22:46:48)
娯暮雨 > (しとしととささやかな雨が降る。闇の地との境の荒野。その片隅に、女が一人倒れていた。両腕と左脚には、薬草なのかどうかは分からぬが、何かをすり潰した物が泥と混ぜこぜとなって乗せるように塗られていた。) (05/04-22:51:37)
娯暮雨 > (普段ならば妖力を帯びた暖かな2本の尻尾は、今は力なくくったりとして、横たわった体の下敷きとなっている。雨を受ける女の顔も体も、血の気が引いたように白く、そして着物は鈍い赤色に染まっている。女は、死んだように眠りながら、夢を見ていた。) (05/04-22:57:10)
娯暮雨 > (辺りは一面真っ白で、何もない。そんな場所をただただ真っすぐに歩いていた。その内、両脇にうっすらと竹林が現れ始めた。いつの間にか出来上がった白い竹林の道を真っすぐに歩いていると、ずうっと奥の方から、子犬の鳴き声が聞こえてきた。可愛らしくて、甲高くて、幼い声。女にとっては懐かしく、愛しい友の声であった。) (05/04-23:06:24)
娯暮雨 > (女は歩くのを止め、竹林の道を駆け出した。声のする方へと。ぐんぐんと進むほどに、女の体は幼くなって行く。女が八つ程の年頃になった頃、竹林の道が終わり、少女の視界に野原が広がった。青い空と、色とりどりの花が咲き誇る野原の真ん中に、白い子犬が一匹。行基良くお座りをしながら、丸まった短い尻尾を千切れんばかりに振っている姿が見えた。) (05/04-23:15:02)
娯暮雨 > (子犬の元へと駆け寄った少女は、座り込んで子犬を抱き上げ、そして抱きすくめた。「きなこ…っ!」切なげで、それでいて愛しさの溢れる声で少女が子犬の名前を呼ぶ。子犬はそれに、元気にひと鳴きして答えながら少女の頬に擦り寄った。白い世界にはそれまで、温度が存在しなかったが、少女と子犬が触れあった時、辺りは春の様に暖かさに包まれた。) (05/04-23:24:22)
娯暮雨 > (「ごめんね…。ずっと、ずっとひとりぼっちにさせて。あの時も…」そう詫びながら、少女はぽろぽろと涙を零す。子犬は、少女の頬を濡らす涙を舐めとって、また元気に鳴いてみせた。少女の抱きしめた子犬は、柔らかくて、暖かかった。) (05/04-23:31:31)
娯暮雨 > (「これからは、ずっと一緒におるけんね…。」そう言って、少女は子犬の背を撫でて。ふかふかとした野原の上に子犬をおろすと頭を撫で、それから涙と涎に塗れた顔を手の甲で拭った。野原の向こうからは、お母さんと、お父さんの気配を感じる気がして。少女は立ち上がると、子犬においでと声をかけ、野原を進んで行った。) (05/04-23:40:23)
娯暮雨 > (少女は進んでいく。けれど、子犬はお行儀よくお座りをしたまま、その場から一歩も動こうとはしなかった。「わんっ!」と鳴く元気な声に呼ばれて、少女は道を引き返す。「行かないの…?」少女は聞いた。子犬はまた元気よく鳴くと、少女の前に回り込んで、小さなか頭で少女の脚を野原の先ではなく、竹林の方へとぐいぐいと押しやった。) (05/04-23:46:24)
娯暮雨 > (せっかく会えたのに、何故また別れなばならないのかと、少女は困惑した。けれど少女を押しやる子犬の力は、驚くほどに強かった。それでも、その姿はじゃれつく子犬そのもので、尻尾は楽しげに揺れている。一歩、また一歩と押しやられる少女を見上げ、子犬は吠えた。何度も何度も、小さな体でめいっぱいの大きな声で。その声に、少女の狐耳がぱたたと揺れる。) (05/05-00:05:46)
娯暮雨 > (『娯暮雨がボクの事忘れちゃったとしても、その時はもう一度、友達になればいいんだよ!』明るくて優しい声が、子犬の鳴き声と重なる。少女は思い出した。そんな風に言ってくれる友達が、「あちら側」にいる事を。) (05/05-00:10:15)
娯暮雨 > (もう、居なくならないと約束した友達がいた。仲間になると誓った友達がいた。俺より後に死ねと言ってくれた人がいた。) (05/05-00:13:10)
娯暮雨 > (そして、どこにいようとも 『私は、これからもずうっとお前の傍にいるよ。』) ―そう、言ってくれた人がいた。) (05/05-00:16:31)
娯暮雨 > (子犬に何歩も押しやられた少女の姿は、すっかり元の年頃へと戻っていた。「きなこ…。」女は膝を折ると、満足げに尻尾を振る子犬の丸い頭を最後にもう一度だけ撫でた。「ずっと…傍にいるからね。」そう言って、女が泣きそうな顔でへにゃりと笑うのを見て、子犬も最後に「わんっ!」と朗らかな声で吠えた。) (05/05-00:22:55)
娯暮雨 > (子犬の向こうには、ただただ綺麗で優しい野原が広がっている。子犬を撫でた手を下ろしながら、「だいじょうぶ…?」と女が尋ねる。子犬は、下ろしかけの女の手にお手をしてみせた。そんな様子に、女の表情にはじわりと笑みが滲んだ。問い返すように子犬が首を傾げる。「ありがとう。拙者ももう、大丈夫でござるよ。」女が答える。) (05/05-00:30:54)
娯暮雨 > (背後の竹林の道は、いつの間にか橋に変わっている。…しとしとと降る雨の音の向こうに、傘を持ったおばあちゃんが迎えに来る音がする。子犬は、女に触れていた前足を離し、そして女は、後ろを振り返った。) (05/05-00:38:23)
娯暮雨 > (辺りは一面、真っ白で何も見えない。うっすらと開いた瞳を満たした、白い月の光が徐々に引いていく。満ち足りた月と、満点の夜空が見えた。)―…夢かぁ…。(かすれた声で、それでいて、幸せな溜息のようにぽつりと零して。眩しそうに目を閉じる。) (05/05-00:44:54)
娯暮雨 > ……ん…。(体が動かない、と気付いた後に遅れてやってくる痛みは、中々のものでござった。特に、右腕はかなり腫れあがっている。痛み以外の体の感覚が殆どない。いつもより、夜風の香りが濃く感じる。それから、薬草や土の香りと、そこにほんのりと混じる子マンモスの気配。)…ちゃんと、帰れたかなぁ…。(瘴気の感じぬここはきっと闇の地の外だろうと。子マンモスが再び迷子になっていない事を祈りながら、再び目を開いた。) (05/05-00:51:12)
娯暮雨 > (さて、これからどうしようか。そう考えている内に意識がまた遠のいていく。血と共に妖気を多大に失い、そして傷ついた体は、言う事を聞きそうにない。)……(右腕…は、ピクリとも動かない。辛うじて動きそうな左手を痛みに耐えつつ動かせば、震える指で印を組み。)…『一反木綿』…。(唱えると、帯の合間から赤い札がしゅるりと抜け出て、煙とともに一反木綿と呼ばれる妖怪へと姿を変えた。) (05/05-00:57:14)
娯暮雨 > (出てくるなりオロオロと揺らめく一反木綿へ、へにゃりと申し訳なさ気な笑みを向けて)…あとで説明致すから、温泉まで運んで貰えぬでござろうか…?(そんな申し出に、一反木綿は小さなウェーブをいくつも作りながらコクコクと頷いた。) (05/05-01:00:09)
娯暮雨 > …それと、運び終わったらお兄ちゃんに…、帰りが、遅くなる…。…って…(その言葉を遮るように、物凄い速度で頷きまくる一反木綿の姿に、思わず口元にクスリと笑みを浮かべつつ。ありがとう。と声にならぬものの口を動かし礼を述べれば、目を閉じると共に再び意識を手放した。) (05/05-01:04:27)
娯暮雨 > (次の瞬間。―ピシ…。っと鬼の角に亀裂が入ったかと思えば、あっという間にぽろろと角は砕けてしまう。と共に、下で体を支えていた2本の尻尾も消えてしまった。力を酷使し過ぎたが故の妖気切れ。それを見て余計に慌てた一反木綿に癒しの湯へと運んで貰えば、いつもの様に底へ沈む事となるようで。) (05/05-01:10:36)
ご案内:「※荒野の片隅」から娯暮雨さんが去りました。 (05/05-01:10:41)
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