昔話『鬼太郎(本編)』 本童話は、本編、実践編、解説編、解決編の4部構成で構成されます。 ===================================================== ■本編(著者不明。いつのまにか人社会に刷り込まれた民間伝承より。) シーン1『不老長寿の桃:ファイト一発』  むかしむかしあるところに、なかむつまじいおじいさんとおばあさんがすんでおりました。  あるひ、いつものように、おばあさんが、かわでせんたくしていると、なんということでしょう。  おおきなももが、どんぶらこっこー。どんぶらこっこー。とながれてくるじゃありませんか?  おばあさんは、たいそうよろこんで、ももをかわからひろいました。  おじいさんといっしょにたべてみると、なんとまぁ、そのもものおいしいこと!  じようまんてん。えいようばつぐんのももは、おばあさんのはだをわかわかしく、よみがえらせて、  おじいさんのまがっていたこしを、えいやっともどすほどのものだったのです。※1 シーン2『桃太郎:幼少のみぎり』  ふたりが、けっこんしたてのときのようになかむつまじくくらしていたあるひ。  おばあさんがどこからか、たまのようなあかごをつれてきました。  このこはももがさずけてくれた、きせきのこ。だから、ももたろうとなづけましょう!  ももたろうとなづけられたおとこのこは、まいにちのやまをかけめぐって、げんきにたくましくそだち、  ついに、じぶんをそだててくれたおじいさんとおばあさんのために、ひとはたあげることにしたのです。  むらからうばっていったたからもの、とりもどすために、おにをたいじしてくる!  きょうからおれは、おにたいじのおにたろうだ!※2 そういって、おにたろうはおにがしまにむかいました。  しんぱいしたおばあさんにもたされた、まほうびんをぶらさげて。 シーン3『鬼太郎:元服。ゆかいな仲間たち』  おにたろうさん! おにたろうさん! おこしにつけたうしのちち。いっぱいわたしにくださいな!  いぬのねがいに、おにたろうはこたえました。  やりましょう! やりましょう! これからおにのせいばいに、ついてくるならやりましょう!    おにたろうさん! おにたろうさん! きれいでしろいうしのちち。いっぱいわたしにくださいな!  さるのねがいに、おにたろうはこたえました。  やりましょう! やりましょう! これからおにのせいばいに、ついてくるならやりましょう!    おにたろうさん! おにたろうさん! とってもあまいうしのちち。いっぱいわたしにくださいな!  きじのねがいに、おにたろうはこたえました。  やりましょう! やりましょう! これからおにのせいばいに、ついてくるならやりましょう! シーン4『辛い旅路:貴い犠牲』  ながいみちのりをへて、おにたろうはついにおにがしまにつきました。  おにがしまでは、おにがどんちゃんさわぎをおこしています。  むらからうばっていった、おまつりのときにしかでないまっしろなおこめを、おしげもなくたいて。  ももたろうは、おともをつれて、おににむかってはしりだしました。    せまりくるおにたちは、どとうのいきおいです。  だけど、こちらもまけてはいません。 ちぎってはなげ、ちぎってはなげて、おにをたおしていきます。  だけど、ながいながいたたかいのなかで、おとものさるが、きじが、いぬがたおれていきました。  おにはいっぱいいて、いくらてあしをちぎっても、てんでききめがありません。  ひとりのこったおにたろうは、いっぱつぎゃくてんのきかいをねらい、おにのくびをとることをちかいます。 シーン5『潜入:鬼の至宝』  おにたろうは、おにのしろにせんにゅーしました。  きびしくめをひからせる、おにのしせんをかいくぐって、おにのあたまにちかづいたおにたろうは、みたのです。  よにもうつくしい、おにのひめを! おにたちがまもる、このよのしほうを!  おにたろうは、はげしくまよいます。このくびをとるために、じぶんはここまできたのだ!と。  あとは、このくびをとってしまえばおしまいだ!と。  だけど、おにたろうは、おにのひめをたおすことはできませんでした。  かわりに、おにたろうはしりました。  おにがむらからたからをうばっていったのは、すべてこのおにのひめのためなのだ。と。  おにのひめをおこすことができたなら、たからなどいらないのだと。 シーン6『百鬼の王と眠り姫』  おにたろうは、おにをたおすことをやめ、かわりに、おにのひめをたすけることにしました。  かならずたすける。  ひとめぼれだったおにたろうが、おにのひめにくちづけをすると、きせきがおきたのです。  おにのひめは、ながいながいねむりからさめて、おにたろうのあいをうけいれました。  おうとなったおにたろうのめいれいにより、むらにはぞくぞくとたからがもどされていきます。  むらはたからをとりもどしました。だけど、おにたろうはもどってきません。  おにたろうは、おにがしまのおうとなり、おにのひめとすえながくくらしたのです。  ※1 不老長寿の桃  ※2 元服に伴う改名