->  必要なモノ -大ピンチ!-  <-
date->  Thr Sep 16 20:02:10 2004


 突然だが、人間にとって必要なモノとはなんであるか知っているかい?
 愛、名誉、金、食料・・・ まぁ、色々とある。
 勿論それぞれが正解ではある。しかし今回の正解ではない。
 ・・・別にもったいぶる必要もないので、お教えしよう。

 それは紙で出来ている。
 それはジャバラで、不器用な子供でも仕組みが分かればすぐ作れる。
 当るとよい音が響くがさして衝撃はない。

 さて、分かったかな?
 まぁ答えを言うだけでは面白くないので、実例をお見せしよう―――



「あーーーもーーー!!」
 いつもの館のいつものホールで、ミストは金切り声を上げた。
 ぶかぶかの帽子が落ちるほど頭を振り、髪をかきむしる。発狂の一歩手前のような状態である。
 周りに居た他の店員や客は、彼女の行動に引いたり驚いたり、興味が無かったり、様々な反応をした。
「おいおいどうしたミスト。そんなに怒ってるとエネルギーが減ってなけなしの胸がへごっ!?」
 スパーンッ! と心地よいハリセンの音と共に、通常セクハラわんこ―――狼亜人のデュバイドが大の字に倒れた。
「ったく、お前はいつも一言多いな・・・」
 そんな相棒を眺めながら、何時ものようにヴァインが嘆息する。
「いでで・・・ ちょっとしたジョークじゃんかよ」
 頭をさすりながら起き上がるデュバイド。その言葉にミストは反応を返さなかった。
 ヴァインが口を挟む。
「ともかく、何があったのだ?」
「・・・ウチ、大赤字なの今。なんか知らないけど売上金が根こそぎ無くなってるんだ」
「穏やかではないな・・・」
 事の大きさを想像し、ヴァインは眉をひそめた。
「うん。でも一応足は付いてるんだ・・・」
 言いつつミストは持っている紙を見せた。
「なになにぃ・・・・・・ これであなたも理想のバストをぉ?」
 文を読み、呆れるデュバイド。ヴァインもやれやれと肩をすくめた。
「問題は、誰がこんなのを店の金を使って買ってるかって事! 絶対捕まえてお金取り戻す」
「へぃへぃ、がぁーんばってくだーさい」
 既にやる気が無いのか、デュバイドは適当に相槌を打った。
 彼女もどうでもいいのか、それに対する言葉は無かった。
「さて、と・・・ まずは店員をあたるか」
「・・・非常に言い難いんだが」
 と、今まで黙っていた店員の一人が声をかける。
「ん、なに?」
「その紙に書かれてる商品全部・・・ ミストが買ってきたのを見たぞ」
「・・・・・・え?」
 硬直。
 世界が止まる。
 いや、時計の針は動いてるのだが、その言葉が響いた空間は完璧に停止した。
 数秒。
 周囲の冷たい目線が、ミストに刺さる。
「・・・やれやれ、大ボケをかまして大墓穴か」
 深々と溜息をつくヴァイン。
 横でデュバイドは剣舞の如き動作でハリセン(当社比二倍)を取り出し構える。
「い、いやこれはレニに頼まれて買って―――」
「問答無用ぉぉぉぉーーーーっ!!!」

 スパァァァァァァンッ!!!

 この日、歴史に残るほど美しく壮大なハリセンツッコミが炸裂した。



 ・・・と、まぁそんなわけだ。
 そう! 我々に必要なモノはずばりハリセン!
 人生、いついかなる時につっこむタイミングがくるか分からない。その時のために、手製でも市販のものでも、ハリセンは一本持っておいたほうが良いだろう。
「・・・おい」
 さて次は・・・・・・ んぉ? なんだヴァイン。
「なんだじゃないだろ・・・ 何をやっておるのだお前は」
 いや、なんか面白いもん見つけたから、暇つぶしにちょっとな。
「はぁ・・・。どうなっても知らんぞ、俺は」
 にっひゃっひゃっひゃ、だぁーいじょうぶ。誰にも見つかりゃしねーって。
「ふぅーん・・・ ボクってこーゆーキャラなんだ」
 おぅ。いや別にお前だからって訳じゃねぇんだが、別に祥でもよか・・・ ん?
「へぇ・・・」
 ミッ、ミスト!? お前何時の間に・・・!? ってかその手に持っている刀とにじみ出ている怪しいオーラはなんだ!?
「ミスト? ハハハ・・・・・・ 誰の事?」
 ・・・なに!? まさか!!
「ふんっ!」
 げぶぉッ!?