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食事の様子、ベンゾーニ爺さんあらわる。
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食事の様子、ベンゾーニ爺さんあらわる。
2018/07/29/13:42:14
No.669
語り手
E-Mail
平麺、きし麺、タリアテッレ。
それは、柔らかく、ツルツルとしていて、和の心もきっと満たしてくれる。
帯状のパスタはコシがあり、ツルツルとしていて、のど越しが良い。
それが肉汁と香草で調理され、豊かな香りと旨味が溶け込んだ、クリームソースが絡まって、とても美味しい。
瑠璃色の少女の前には陶器の器に盛られたそんな美味しそうなパスタが一皿。
それから、レタスと、キュウリやニンジン、パプリカ等が薄切りにされて、酢とパジルを合わせたものだろうか、甘酸っぱくて、少し舌にピリッとしたドレッシングが和えられているサラダが一皿。
それから、オリーブやキャベツと魚の漬物が卓の真ん中に大きめの器に盛られている。これは小皿に欲しいだけ取って食べてもいいとの事だ。
フォークやスプーンの使い方はきっと大丈夫だろうけど、パスタに食べ慣れていないのなら、ダリアが「ほら、こんな感じにするんだよ~。」と、フォークをクルクル回してパスタを絡めとる様子を見せてくれる。
部屋の真ん中にある丸い大きな大人数用の食卓を、ラピス、ダリア、エリゼ、ルッチラが囲んでいた。
ルッチラおばあちゃんと、その義理の娘はラピスと同じメニューを食べているが、ダリアは隣でベジ仕様になったパスタを食べている。
先ほど、時狭間でお菓子を交換して食べ比べていた事を思い出したのか、ダリアは「ほら、ラピス、こっちも食べてみて。」と、小皿に盛って差し出してくれる。
特に拒む事無く食べてみれば、チキンの旨味が消えて、アッサリしている代わりに、甘くてほっくほくな栗のフレーバーがソースに溶け込んでいて、何となく和んだ感覚が広がる。溶けかかった栗の欠片を口にすると、ハーブの爽やかな風味と、苦味と、ミルキーな甘味と、栗のホクホクとした触感と甘さが味わえる。
パスタそのものも、旨味はない代わりに、甘くて、アッサリしていて、ほっこりとした甘さが絡まった、ツルツルのど越し爽やかな平麺パスタの味わいが。
「エリゼさん。これ、美味しいね♪」
「そうですか?それはよかったです。」
ベジ・パスタの出来栄えに満足そうにしてるダリアに、エリゼはホッとした様子の笑顔を見せている。
ラピスも時狭間の時のように、力いっぱいに喜んでくれるなら「ああ、それはよかったです。」と、胸に手を当てて安堵しながら、嬉しそうな笑顔を浮かべるエリゼの顔を見られる。
そのエリゼはオリーブの漬物が好きらしく、度々、口に一粒運んでいる。
「エリゼさん、漬物好きなんだね。」
「はい。あちらでは毎日食べていましたし、ライ麦や雑穀のパンと合いますし。」
「レーマの人は皆、漬物食べるの?」
「どうでしょう。私の住んでいたニームヴェルグは都ですし、修道士や技師や、教養人が多い都でしたので…。地方の村々では、麦粥とカブだけの食事がずっと続いていて、肉やチーズを食べれるのは祝祭日だけだと、聞いた事があります。帝国はこちらと違って、冬は厳しくて長いですし、塩も余所の国から買わなければなりませんから…。」
「そうなんだ…農家の人たち、大変だね。」
「ええ。でも、良い領主様が治めてくださってる所は、もう少し良いものを食べれるみたいですね。普段は粗食で働いて、週末にはビールやソーセージ、プレッツェル等を食卓に上らせて、楽しく過ごせるみたいですね。」
「プレッツェルって……あの面白い形の塩パンの事だよね。私、アレ好き。特にメープルシロップかかってるの。」
「メープルシロップ、ですか?」
「あ、うん。こっちには普及してないからね。私の故郷だと、結構ポピュラーな甘味なんだけど、カエデの樹液を煮出して作るんだけど、すごく美味しいんだよ。甘苦い感じで、癖があるの。」
「なるほど。新大陸の方でそのようなシロップがあるんですね。」
「そうそう。スコーンとか、クッキーとか、パイとか、ケーキとか、色々なものに使える……よく皆やるのが、パンケーキにバターを乗せて、メープルシロップをたっぷりかけて食べるんだけど、すごく美味しいんだよね、パンケーキにバターとメープルシロップがじゅわ~としみ込んで、とても美味しい。」
「いいですね。甘い物。こちら…ブリランティでも少し贅沢ですけど、でも、新大陸では違うんですね。」
「うん。割と砂糖もメープルシロップも蜂蜜もたくさん普段から見てるし、食べてたかもね。プレッツェルやワッフルなんて、屋台で売ってるし、私、学校の帰り際にお小遣いで食べてたし……。あ、でも、こっちのモノってなんでも綺麗だし、丁寧だし、細やかだよね。特にレーマ帝国製のモノって、綺麗だし、長持ちするし、繊細だし、凄く評判いいよね。」
「ありがとうございます。私はもう、ブリランティの人間ですけど、帝国の事を褒めて頂いてとても嬉しいです。」
エリゼは瞳を潤ませて、胸に手を当てている、感情は控え目にしか面に出なくても、感激している事が伝わる表情だ。
「こっちの大陸でも、帝国の人って、勤勉で、誠実で、粘り強くて、意志が強くて、勇敢で、すごく頼もしいって評判だからね。モノづくりや料理にもそれが出てるんだろうね~~……。あ、だから、エリゼさんの料理って美味しいんだね。」
「ダリアさん。それは、褒め過ぎです…。それに、私など、そこまで仰ってもらえる程のものじゃありませんから……。でも、帝国が皆さんに評価されているのなら、とてもありがたく思います…。」
エリゼは恥ずかしそうに額を寄せて、ダリアの笑顔と讃辞を受けていたが「でも、ダリアさんを見ていると新大陸の人はみんな、明るくて気持ちの良い方々なのかな、と、私も思います。ダリアさんは明るいし、行動力があって、とても楽しくて、素敵な人ですし…。」「きゃぁぁぁ~~っ♪うれしーー♪」等々、しばらく、ダリアとエリゼは褒め合戦を繰り広げる事に……。
それから、しばらくして、すっかり茹蛸みたいに赤くなったダリアとエリゼを瑠璃色の少女は見る事になる。
まるで、二人して顔から、ぷしゅ~、と、湯気を上げているみたいだった。
そんな姿は、とっても可愛らしくて、二人の年頃の少女のように見えたりするのかもしれない、
ルッチラおばあちゃんは。「ふぁっふぁっふぁ。」と、ほほえましそうに笑っていた。
ルッチラはお手洗いに席を立った。
エリゼが付き添おうとすると、何か言われた「アタシの事はいいから、お客さんの相手をお願いよ。」と、ダリアがわざわざ通訳をした。
おばあちゃんは杖を突きながら、亀のようにゆっくり、ゆっくりと、奥へ姿を消していった。
「エリゼさん。ルッチラおかーさまって、ここで独りで暮らしてるの?」
何気なくダリアは尋ねてみる。
「はい。…出来れば、私たちと一緒に住んで欲しいのですが…此処と、それにご近所の方と離れ難いのですね。」
「そうなんだぁ…。でも、一人だと買い物とか大変だね~。」
「はい。出来れば教会の配給で満足して欲しいのですが……義母は自分で料理をしたり、誰かをおもてなししたいみたいですね。」
「あはは。楽しいおばあちゃんだね。ところで、教会の配給って、何か教会と契約でもしてるの?」
「はい。近くのサンタ・ミリヤム・イッラ・アズーロ教会と、義母は自分の死後にこの家と土地を教会に譲る代わりに、いくらかの年金と配給を受け取っているのです。」
「そうなんだ。」
「はい。おかげ様で生活に困る事はないのですが…。夫が義母をとても心配しているのです。義母はあの通り、独りで買い物に行ってしまったり、と、無理をしてしまう人なので…。せめて、誰かと一緒なら、それほど心配しなくてもいいのですが……。」
「でも、きっと、あのお婆ちゃん、本当はなんでも自分でやりたいんだろうね。だから、好きにさせておく事は、きっと、お婆ちゃんを元気にしてくれると思うよ。」
「ドゥオーモの方まで行ってしまわれるので……もしかしたら、道路で馬車に跳ねられてしまいはしないか、と、夏の暑さのせいで、途中で倒れられてしまわないか、と、色々と心配してしまうのですが……。」
「そうだね。誰か友達とか一緒に付き添ってくれる人がいればいいのにね。」
「はい…。」
ルッチラおばあちゃん、戻って来る。
現地語で何かを捲くし立てる。エリゼは早口で捲くし立てられると、やはり、現地語が理解できないらしい。目をパチパチさせている。
「ほぉら、エリゼさん!ちゃんと一人でできるでしょう!あたしはまだまだ若いモンには負けてないよ!ちょっと、若い頃より動くのが遅くなっただけだヨ!…だって。」
「そうですね。私が心配し過ぎていたのかもしれませんね。凄いですお義母様、お年を召しているのに一人で何でもできるなんて立派です。」
そのエリゼの言葉を何故かダリアが翻訳をしてルッチラおばあちゃんに伝えると、おばあちゃんは「そうでしょう、そうでしょう。」とダリアが通訳するような事を言いながら「ふぁっふぁっふぁ。」と笑っている。
「けれど、それでも、心配なんですけどね。素早く動けないので、いつ、馬車が過って義母に突っ込んでくるかわかりませんし、もう背を立てられないようなので、いつ、腰を痛めないか、と、色々と心配の種がありますしね…。」
そして、エリゼは「せめて、誰かがいつも傍にいてあげれていればいいのですけど…。」と、頬に手を当ててしばし悩む様子を見せる。
「申し訳ありません。今、悩む事ではありませんでしたね。」
ダリアとラピスに頭を下げるエリゼ。
「きにしなーい、きにしなーい。」
ダリアは笑顔で手を振っている。
ゆ~らゆ~らと、おっとりゆったり、脱力してしまいそうな感じで。
ふりふり~、ふりふり~、ふ~り~ふ~り~。
ダリアがふと、部屋の奥に鎮座している重々しい箱を目に留めて、ぎょっとした顔でそれを見つめた。
「すっごい金庫。」
そう、金庫だ。鉄で出来た重厚そうな作りで、錠も複雑そうだ。
ルッチラお婆ちゃんが得意げに何かを現地語で言った。
「あそこに、老後の蓄えが入っているのよ。あの金庫に入れて置けば、聖母ミリアム様が守ってくれるから安心よ!…だって。」
「大丈夫なのでしょうか。もっと、信用のおける方に預けるとか…私、あれも心配なんです。…ほら、少し力自慢の男の人が二人いれば、サッと運んでしまいそうで…。」
「そうねぇ…。ああいうのを魔法でちょいちょいっと開けちゃう事も、できるわけだし…。」
「そうなのですか?」
「あ、うん。繁華街の界隈のオジサンがそういうの得意でね。もっとも、そのオジサンはカギを失くしてしまった人向けに、金庫を開けてあげるサービスで商売してる人なんだけど。」
「……。そういう魔法を悪用する人もいるかもしれないわけですよね。」
「そうだね~…。」
ルッチラおばあちゃん。現地語で何かをわぁわぁ捲くし立てた。
「何を話してるの?どうせ金庫が危ないって事でしょ!心配いらないわよぉ。聖母様がこの金庫から盗もうとする悪者には…?…ええと、”神のガス”を与えて懲らしめるんだから……。」
ダリアは通訳していて、謎の単語が出て目を丸くしてる。「なあに?それ。」と、首をこてんと倒している。
「わかりません……義母は時々、そういう事を仰るのです。何か、防犯対策をしているという事なのでしょうか…。」
「うーん。」
ダリアが現地語でいくつかルッチラに質問をする。
「ルッチラおばあちゃんのお母さんがそう言ってて、お母さんのお母さんも、そのまたお母さんもそう言っていたらしい…って事みたい。」
「そう、なのです、か……。」
謎の答えにはならない話に、エリゼは表情を曇らせる。「…もし、毒ガスなどが仕掛けられているのでしたら、泥棒よりもお義母様の方が心配です。誤って罠が作動したら、この部屋に毒が充満してしまうのではないでしょうか…。」
危機意識が高いのだろう、帝国出身者の生真面目な女は金庫を憂いを帯びた顔つきで見つめている。ダリアはその顔を見て、じーっと見てから、息をついて漏らすように笑みを浮かべた。
「エリゼさん。今まで大丈夫だったんだから、これからも大丈夫だとは思うけど、そんなに心配なら、ちょっと私が見てみるよ。一般的な罠なら私も解除できるから。」
「そうなのですか?…お願いしてもよろしいのでしょうか。」
「うん。任せて。」
「ありがとうございます。またお世話になってしまいますね。」
「きにしなーい、きにしなーい♪」
包み込むような笑顔のダリアと、安堵するエリゼ。
それを眺めていたルッチラは、何かを現地語でわぁわぁ言った。
「えーと、何を話してるかわからないけど、”神のガス”がある限り、何も心配いらないわ。私の老後の蓄えは、聖母様に守られてるのよ!だって。」
「聖母様がそのような事までしてくださるなんて、聞いた事がありませんが。きっと、何か防犯対策のようなものがあるのかもしれないですね。」
信心深いとは言えない、現実的で生真面目な発言をするエリゼ。
先ほどよりも、防犯対策の罠の可能性を信じてるような口調だ。
「宗教的に気にならないなら、ユリス人の銀行に預けちゃうとかね。」
「いい噂は聞きませんけど……。」
「あれは、教会とかが意図的に流してる場合とか、偏見持ってる人が出まかせ言ってる場合とかが多いから、あまり真に受けちゃダメだよエリゼさん。」
「そうなのですか。」
「ユリス!」
ルッチラおばちゃんは耳ざとく聞きつけて、何かわぁわぁと悪態をついた。
「救世主を見とめない律法主義者たち!あいつらが聖母様の御子を、邪悪なる群衆に売り渡したのよ!新しい契約をイッサ様が結んでくだすったのに、まだ古い契約を守り続けているなんて……。ああ、恐ろしい。あんなのと関わったらパラダイスには行けないわ…だって。」
「その通りなのではないのですか?」
「でも、帝国のマイスター・ゼーゲンハルトの教えだって、汝が与えられし仕事を神に捧げるべく取り組め、心を尽くし、霊をつくして仕事せよ、さすれば、楽園へと導かれん、とかなんとか、教えてなかったかな。」
「そうですね。日曜礼拝やミサでそのようなお話を司祭様が。」
「天使祝詞を唱えても、仕事を一生懸命やって神様を喜ばせても、楽園に行けるんだから、ユリス人に関わってパラダイスに行けなくなる事はないと思うよ~。」
「そう、かもしれませんが…でも。」
「うん~?」
「きっと、周りはそうは思ってくれないと思います…。ゼッサ様…いえ、イッサ様の事を救世主と認めない輩と関わるなんて…と。」
「うん。そうだね。」
人は一人で生きているわけではないのだから。
どうしようもない事もある。
ダリアはにっこりと笑って、話を終えた。
食後、エリゼとルッチラはワインを陶器の杯に注いで飲んでいる。
酒が入ったせいか、ルッチラが現地語で、何かをわぁわぁ言っている。とてもテンションが高い。
「……実は、こうなると、私にも何を言っているのか、わからないのです……。出来るだけ時間を作って、こちらの言葉を覚えているのですが……。ダリアさんはわかります?」
「あ、うん。たぶん、エリゼさんのご飯は美味しい!息子は幸せモノね!私の目に狂いはなかったわ!とか、そういう事をいっぱい言ってるんじゃないかな……。あ、あと、聖母ミリアム様の祝福のおかげとか、なんとか。」
「そうですか……。お義母様にそう仰って頂けるなら、私も安心です……。」
あまり、あからさまに褒められる事が苦手なのか、エリゼは褒められると恐縮してしまったり、気恥ずかしさを覚えてしまうらしい、喜んでいるようだが、落ち着かない様子で、口数が少なくなってしまう。
ダリアはその逆に、笑顔がますます輝いて、目をキラキラさせたり、ふわんふわんに蕩けたりと、解りやすく喜んでいる。
「だいじょうぶ。エリゼさんは、いつもよくやってるよ~。主婦の鑑だよね~。こないだの町内会でも聖母子神輿の事でちゃんと子供たちの事も考えた意見も言ってるし、皆のためにいつも頑張ってるしね~。」
「あ、ありがとうございます……。ダリアさん、そろそろ、私、嬉しいですけど、そろそろ、そっとしておいて頂けると……。お義母様や、ラピスさんもいる事ですし。」
仲睦まじい雰囲気を醸し出しているダリアとエリゼ、その雰囲気を破壊するために破壊者(デストロイヤー)が現れる。
ドーーーンッ!
ドアが大きくあけ放たれると、外で飲んでいたお年寄りが、めでたい顔で顔を真っ赤に入って来る。
「ルッチラ!イン・ヴェーレ!リ・ノストラ・フィオーレ!」
「ベンゾーニ!セイレ・ルモーソ!ペルケモーロ・エンティヴェーネ?」
酔っ払いのおじいちゃんは陽気にルッチラおばあちゃんに黄色い声を飛ばし、ルッチラおばあちゃんは呆れた顔で何かを捲くし立てている。
「エリゼ!今日は外では食べないんだな!お客さんがいるからだね!ようこそ、カンポ・ディ・テリーノ・ポートへ!」
酔っ払いのおじいちゃんは、陽気な笑顔を瑠璃色の少女たちにも向けた。このおじいちゃんは共通語もペラペラに喋るようだ。
「ベンゾーニさん。こちらはダリアさんと、その友達のラピスさんです。ダリアさんは冒険者で、とてもお世話になっているんですよ。ラピスさんは、お義母様を気遣って、ここまで荷物を持って頂いて、部屋の片づけや掃除まで手伝って頂いて……。」
「おお!我が愛しきシニョリーナに親切にして頂いて感謝しますぞ!さあ、小さくて可憐なフィオーナ。このベンゾーニ爺の感謝を受け取り給え。」
そういって、ラピスの前に杯を持ったまま騎士のように跪くと、ベンゾーニ爺様は片手をラピスに捧げるように握りこぶしに差し出して、ラピスが拳に目を落とすと、パッと開く。
すると、そこには、釣り鐘型の花弁の、白い花と赤い花がパッと現れる。
「おお、瑠璃色の美しい髪の少女よ!その髪に相応しい色の花を用意することが出来ればどんなに良かったか。しかし、これは私の愛、この愛をどうか捧げる事をお許しくださいますよう。」
それを見て、ルッチラおばあちゃんは、ボソッと呆れた顔で言った。
ダリアはそれを聞いて、「アハハ~。」と笑っている。
エリゼは「仕方のない方ですね。」と、少し困ったように額を寄せながら、微笑を浮かべている。
もっとも、瑠璃色の少女が迷惑そうな様子であれば「お客様をあまり困らせてはいけませんよ。」と、窘める事になるだろう。
それから、ベンゾーニ爺さんが熱烈にルッチラおばあちゃんに何かを言いはじめ、ルッチラおばあちゃんは、わぁわぁと、何か凄い勢いで捲くし立てている。
「クスクス…♪アンタ、あのお花、アタシにあげようとしておいて、丁度いいからってあの子にあげたんでしょ。いい性格してるわね。だって。面白いおじいちゃんだね~。」
ダリアはくすくすと笑みを零していて、おじいちゃんとおばあちゃんが、わぁわぁ楽しそうに何かを言い合っていて、エリゼは後片付けを始めていて……そうして、穏やかで平和な時間が過ぎ去っていく……。
「そろそろ行こうか、ラピス。」
席を立つダリア。外では日が沈もうとしていて、窓辺から差し込む燃えるような茜色の陽ざしは、遠い所から投げかけられているかのようだった。
照明はランプや手燭、カンテラや松明などに頼る世界だ。夕刻も深まれば暗い所は暗いし、まだ明るい所は明るい。
外に出ると、広場で飲み食いしていた人々はすっかり解散していて、建物の合間から、太陽が命を終えようとしているかのような光で明るく茜色に輝いている。
不意に、ダリアの瞳はその死の間際のような光のような色……それに染まる大海原を思わせる何か……を讃えているような、儚げで、透明感があって、静けさのヴェールに包まれているかのような、それでいて、果てしない様相を瞳に映していた。
「さて、それじゃあ、エリゼさん。ルッチラおばあちゃん。またね。」
「はい。また。次にお会いするのは聖母子神輿の打ち合わせですね。また、よろしくお願いしますダリアさん。……金庫の事も、ありがとうございます。」
「あ、うん。そうだね。金庫は明日にでも見に来るよ。おばあちゃんにちゃんとお話ししておいてね。…それじゃ♪」
「チャオ!」
「チャオ!」
「「「チャオ!」」」
ルッチラおばあちゃんが現地語で別れの挨拶をすると、ダリアが答え、ベンゾーニ爺さんも同じ挨拶をして、最後に皆でチャオ!と笑顔で言って別れた。
瑠璃色の少女は楽しい一時を過ごせただろうか?
なんでも、都の様子を珍しがり、楽しんでいたのだから、きっと楽しめただろう――。
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カツレツ談義
ダリア=E
2017/07/02-20:02:32
[603]
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始まりの一日
瑠璃色の空
2017/07/05-00:05:53
[604]
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都会の風景
ダリア=E
2017/07/09-20:36:41
[605]
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始まりの一日
瑠璃色の空
2017/07/13-23:41:33
[606]
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都会の風景と人々
ダリア=E
2017/07/17-17:36:39
[607]
┗
始まりの一日
瑠璃色の空
2017/07/29-21:54:02
[608]
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街の風景に惹かれる少..
ダリア=E
2017/08/06-20:41:12
[609]
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始まりの一日
瑠璃色の空
2017/08/30-23:49:16
[610]
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荷馬車や馬車が行き交..
ダリア=E
2017/09/03-22:17:05
[611]
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始まりの一日
瑠璃色の空
2017/09/13-21:27:18
[612]
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歩行者を待つのは何時..
ダリア=E
2017/09/17-15:35:48
[613]
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始まりの一日
瑠璃色の空
2017/09/29-13:06:25
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おばあちゃんお金ない..
ダリア=E
2017/09/29-21:14:03
[616]
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始まりの一日
瑠璃色の空
2017/10/11-21:11:04
[617]
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レイエ・ディチェンド..
ダリア=E
2017/10/15-22:27:00
[619]
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始まりの一日
瑠璃色の空
2017/10/20-21:45:05
[624]
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おばあちゃんのして貰..
ダリア=E
2017/10/21-15:10:16
[625]
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始まりの一日
瑠璃色の空
2017/10/24-19:59:17
[629]
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頼もしい子だわね!
ダリア=E
2017/10/28-19:54:24
[630]
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始まりの一日
瑠璃色の空
2017/11/03-22:30:36
[634]
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都の森の入り口
ダリア=E
2017/11/04-23:18:15
[635]
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始まりの一日
瑠璃色の空
2017/11/11-21:54:15
[640]
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おばあちゃんのカゴと..
ダリア=E
2017/11/12-21:21:38
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始まりの一日
瑠璃色の空
2017/11/19-20:25:39
[643]
┗
太陽のような笑顔(そ..
ダリア=E
2017/11/23-19:15:43
[645]
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始まりの一日
瑠璃色の空
2017/11/26-19:39:43
[647]
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聖母子像の祠
ダリア=E
2017/12/03-23:08:41
[651]
┗
始まりの一日
瑠璃色の空
2017/12/20-22:10:03
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聖母崇拝、慈雨の面差..
ダリア=E
2017/12/24-21:14:52
[654]
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始まりの一日
瑠璃色の空
2018/02/04-20:04:06
[657]
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天使祝詞
ダリア=E
2018/02/11-12:29:44
[658]
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始まりの一日
瑠璃色の空
2018/03/01-13:45:50
[663]
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夕方の遊歩道の景色
ダリア=E
2018/03/04-17:44:13
[664]
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遊歩道の脇道の一つの..
語り手
2018/07/01-21:33:24
[666]
┗
以前の依頼者
語り手
2018/07/08-19:42:25
[667]
┗
今日の晩御飯、片づけ..
語り手
2018/07/22-13:07:53
[668]
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食事の様子、ベンゾー..
語り手
2018/07/29-13:42:14
[669]
┗
遊歩道の先
語り手
2018/08/05-20:38:54
[670]
┗
少女の親切が導くもの
語り手
2018/08/15-17:06:00
[671]
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時代
語り手
2018/08/15-17:07:47
[672]
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キャンドル・ナイト
語り手
2018/09/02-19:01:52
[673]
┗
シルヴァ―エルフと働..
語り手
2018/09/24-18:07:55
[674]
┗
お風呂の準備、支度が..
語り手
2018/09/24-18:14:18
[675]
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ビアンカ宅のお風呂
語り手
2018/10/28-18:22:37
[676]
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ビアンカ宅のお風呂2
語り手
2019/01/06-21:02:24
[680]
┗
眠りに落ちる前に
語り手
2019/03/24-20:08:49
[681]
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夜明け前
語り手
2019/03/24-20:11:57
[682]
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森の祝福、暁の光
語り手
2019/04/30-12:18:03
[683]
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鐘楼、詠唱、赤光
語り手
2019/05/04-12:37:55
[684]
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地上の星
語り手
2019/05/04-13:56:49
[685]
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久遠に刻まれる時
語り手
2019/05/05-18:53:08
[687]
┗
受け継がれる光
語り手
2019/05/05-19:48:40
[688]
済
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お出かけの装いは
語り手
2019/05/05-17:25:41
[686]
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美しい夢と幸福な夢
語り手
2019/05/19-17:34:00
[689]
┗
未収録シーン
語り手
2019/05/26-18:29:48
[690]