追ってくる 追ってくる
何度逃げても 追ってくる
それは悪魔の手のように 俺の体を蝕んでくる
やめてくれ 俺は・・・ 俺はァァーッ!!
「げぶろッ!?」
顔面にかかる冷たさに驚いて起き上がる。「お、俺は・・・・・・?」
どうやら水をぶっかけられたらしい、何が何だか整理がつかぬうち、アロルドは上体を起こしながら情報を整理しようと・・・
「大丈夫かーッ!?」
「どへぇっ!」
抱きつかれたのかぶっ叩かれたのか・・・ おそらく後者だろう。ラリアットが素敵にヒットし、もう一度倒れる。
「ちょ・・・ ちょっと待て・・・ 俺は一体・・・ 何故にWhy?」
早速おかしい文法で、アロルドは自分が混乱していることを表現した。
「いやぁ。いきなり倒れるんで、驚いちゃったぞ・・・」
ラリアットをかました張本人、猫耳の少女、岬が心配そうな顔で覗き込んでいた。
「・・・・・・」
心配してんならラリアットかますなや、と言おうとしたがなんか別の災難が降りかかりそうなのでやめておく。
「・・・えーっと、どうしてワタクシめは倒れてあそばせちまったんだっけ・・・?」
明らかに変な喋り方、だが誰もつっこまない。どうやらそれが彼という事らしい、それはそれで虚しいが、まぁ今は置いておく。
「ああ、これ」
岬は酒瓶を彼の目の前に出した。
「・・・・・・・・・はぅッ」
記憶が繋がった。それは悪夢か、はたまた天使の悪戯か・・・
「ってどっちも悪いやん!」
「・・・? どうしたいきなり」
あまりの衝動に、文章につっこんでしまったアロルド。岬はもちろんそんな事が分かるはずも無い。
「あー・・・ いや、ほれ・・・ あー」
冷や汗が出てくる。現在禁酒中、目の前にあるのは好物の酒。でも禁酒中・・・ でも酒が・・・
ぐるぐるぐるぐる・・・ 天使アロと悪魔アロが新体操・・・ いや、してどうする―――忠告と勧誘、をしていた。
「・・・あー もー!」
何の脈拍も無く立ち上がり、外へと駆け出す。
「あ、ちょっ、待てったらー!」
彼が立ち上がった時にぶつかったのか、転んだ岬が、酒瓶を持ったまま追いかける。
5秒後、ギャースという叫び声が夜空に響いたとか響かないとか。
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